近年、企業の成長のカギとして**「人的資本経営」**が注目されています。 人材を「コスト」ではなく「資本」と捉え、投資対象として価値を高めていく考え方です。
この流れを受け、内閣官房より公表されたのが**「人的資本可視化指針」**です。 今回は、この指針が求めている「可視化(情報開示)」のポイントをわかりやすく解説します。
1. なぜ今、「可視化」が必要なのか?
これまで人材にかかるお金(給与や研修費)は、財務会計上は「費用(コスト)」として扱われ、利益を減らす要因と見なされがちでした。 しかし、これからの時代は**「人材への投資こそが、企業の競争力や持続的な成長の源泉である」**という認識が世界中で広がっています 。
投資家も「この会社は将来の成長のために、どんな人材戦略を持っているのか?」を厳しくチェックしています。 そこで、企業が自社の魅力を正しく伝えるために必要なのが、**人的資本の可視化(情報開示)**なのです。
2. 開示すべき「2つの類型」
指針では、開示事項を以下の2つのタイプに分けて検討することを推奨しています 。
- 独自性のある取組・指標・目標
- 自社のビジネスモデルや経営戦略に直結する、その会社ならではの指標。他社と比較するためではなく、「自社の戦略の強み」をアピールするためのものです。
- 比較可能性の観点から開示が期待される事項
- 投資家が他社と比較しやすいように、標準化された指標。
- (例:女性管理職比率、離職率、男女間賃金格差など)
3. 開示のフレームワーク「4つの要素」
具体的にどのように開示すればよいのでしょうか? 指針では、気候変動開示の「TCFD」と同様の4つの要素に沿って整理することを推奨しています 。
- ガバナンス:取締役会が人的資本についてどのように議論・監督しているか。
- 戦略:人材戦略が経営戦略とどう連動しているか。リスクと機会をどう捉えているか。
- リスク管理:人材に関するリスクをどう特定・評価・管理しているか。
- 指標と目標:具体的な数値目標(KPI)と実績。
4. 具体的な開示項目の例
指針の付録には、参考となる具体的な指標がリストアップされています。これらは有価証券報告書や統合報告書での開示によく使われます。
- 育成:一人当たり研修時間、研修費用、リーダーシップ開発の状況
- エンゲージメント:従業員エンゲージメントスコア
- 流動性:離職率、定着率、採用コスト、後継者準備率
- ダイバーシティ:男女間賃金格差、女性管理職比率、男性育児休業取得率
- 健康・安全:労働災害発生率、健康経営への投資
- コンプライアンス:ハラスメント相談件数、人権研修の受講率
5. 完璧を目指さず「ステップ・バイ・ステップ」で
「いきなり全てのデータを集めて完璧な開示をするのは無理…」と感じるかもしれません。 この指針でも、最初から完璧を目指すのではなく、**「できるところから開示し、対話を通じて磨き上げていく(ステップ・バイ・ステップ)」**という姿勢が推奨されています 。
まとめ
「人的資本可視化指針」は、単に数字を並べるためのマニュアルではありません。 **「自社の経営戦略を実現するために、どのような人材が必要で、そのためにどう投資しているか」**というストーリーを語るための手引書です。
まずは経営陣で「わが社の人材戦略とは何か?」を議論することから始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料:内閣官房 非財務情報可視化研究会「人的資本可視化指針」
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