本格的な人口減少社会を迎える中、企業にとって人材確保は喫緊の課題です。東京都は、働く場において女性が個々の能力を十分に発揮できる環境を整備するため、「東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例」を制定し、都内事業者の具体的な取組事例を公開しています。
今回は、経営者や人事担当者の皆様が、自社の働き方や人事制度をブラッシュアップするためのヒントとなるような、具体的な取組事例をテーマ別にご紹介します。
1. 採用力アップにつながる「職場環境の整備」
女性の採用を進めるためには、まず安心して働けるハード面・ソフト面の環境整備が不可欠です。
- ハード面の改善: 建設業や運輸業など、従来男性が多いとされてきた職場では、女性専用の休憩室や仮眠室の新設、トイレの洋式化、更衣室の整備などが進められています。姿見の設置や鍵付きロッカーの導入など、細部にまで配慮した空間づくりが女性からの応募増加に直結しています。
- ソフト面の工夫: 短時間勤務制度や週4日制、テレワークなど柔軟な働き方ができる制度を導入し、自社のホームページやSNSで発信することで、女性だけでなく男性からの応募や有休取得率の向上にもつながっています。
2. キャリアアップと管理職登用の推進
女性の管理職比率を向上させるためには、制度だけでなく「伴走支援」や「意識改革」が重要です。
- 経営層による伴走支援: 役員が女性幹部候補を被支援者として数ヶ月間伴走し、育成するプログラムを実施している企業があります。これにより、候補者の自己肯定感が高まり、社内での可視化も進んでいます。
- 他社との交流: 社内だけでなく他社との合同研修を実施し、社外のロールモデルに触れることで、女性従業員が自身のキャリアをポジティブに描ける土壌を作る取組も効果を上げています。
3. 「育業」の推進と柔軟な働き方による継続就業
東京都では、育児休業を「休み」ではなく「大切な仕事」と捉え、**「育業」**という愛称で社会全体で応援する気運の醸成に取り組んでいます。
- 離職の防止: 時差勤務制度を1日単位で選択できるようにしたり、時間単位の休暇制度を導入することで、子育て中だけでなく、通院や家庭の用事がある日でも柔軟に働けるようになり、ライフステージの変化による退職をゼロにした企業事例があります。
- 男性の育業推進: 男性従業員向けに制度の基礎知識に関する研修を行ったり、実際に育業した従業員の声を社内に発信することで、「育業が当たり前」という風土が根付き、復職率100%を達成している企業も存在します。
4. 女性特有の健康課題への寄り添い
生理痛や更年期症状、不妊治療といった女性特有の健康課題に対するサポートも、離職防止やモチベーション向上に欠かせません。
- 休暇制度の工夫: 生理休暇を取得しやすいように名称を**「エフ休」**に変更したり、時間単位の休暇を取得可能にすることで、無理なく働き続けられる環境を整える企業が増えています。
- 不妊治療へのサポート: 不妊治療と仕事の両立を支援するため、性別問わず取得できる「セルフケア休暇」を導入し、上司を介さずに相談できる窓口を設置することで、プライバシーを保護しながら休暇を利用しやすくする工夫も見られます。
まとめ 女性が活躍できる環境を整えるための取組は、単に女性従業員のためだけでなく、誰もが働きやすい職場をつくり、結果として企業の生産性向上や採用力の強化、企業ブランドの向上につながります。自社の実情に合わせて、できるところから一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
FAQ(よくある質問)
Q1. これらの取組は、大企業でしか実現できないのではないでしょうか? A1. いいえ、そんなことはありません。事例集には、従業員規模が100人以下の事業者や、30人以下の事業者における具体的な取組(例えば、トップダウンでの職場改善や、社員の声を取り入れた社内ルールづくりなど)も数多く紹介されており、会社の規模に関わらず実践できるヒントが豊富に含まれています。
Q2. 「育業」という言葉にはどのような意味が込められていますか? A2. 東京都が2022年に公募・選定した育児休業の愛称が「育業」です。育児を単なる「休み」とするのではなく、**「未来を担う子供を育てる大切な仕事」**であると位置づけ、望む人誰もが育業できる社会を目指すという思いが込められています。
Q3. 固定的な性別役割分担の意識を変えるにはどうすればよいですか? A3. 従業員アンケートを実施して「女性にだけ補助的な業務が偏っていないか」などの実態を可視化することや、経営者を含む全従業員を対象に**「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)研修」**を実施することが有効です。これにより、性別に関わらず互いを尊重し合える職場風土への改善が期待できます。
Q4. 不妊治療と仕事を両立するための具体的なサポート例を教えてください。 A4. 治療への理解を深めるための社内研修やeラーニングの実施、相談窓口の設置などがあります。また、治療のために月に1日以上取得可能な休暇制度(セルフケア休暇、ファミリー休暇など)を新設し、休暇取得時の理由申請を不要にするなど、プライバシーに配慮した制度設計を行っている企業もあります。

コメント