令和8年(2026年)12月1日より、改正された公益通報者保護法(令和7年法律第62号)が施行されます。 今回の改正では、通報者の保護がこれまで以上に強化されるとともに、企業(事業者)にはより実効性の高い体制整備が求められるようになりました。
この記事では、働く人が知っておきたい、また企業が対応すべき「改正の4つの重要ポイント」をわかりやすく解説します。
1. 公益通報者の範囲拡大(フリーランスの追加)
これまで保護の対象となっていた労働者、派遣労働者、退職者(退職後1年以内)、役員に加え、新たに特定受託業務従事者(フリーランス)フリーランスであった者が追加されました。 近年、多様な働き方が広がる中で、フリーランスの方も業務の委託先で不正を目撃しやすい立場にあります。通報によって契約を解除されるなどの危険から守るため、公益通報を理由とする業務委託契約の解除その他の不利益な取扱いが明確に禁止されます。
2. 不利益な取扱いの抑止・救済の強化(立証責任の転換と直罰の新設)
公益通報をしたことを理由とする解雇や懲戒などの不利益な取扱いは禁止されていますが、今回の改正でさらに強い抑止力が設けられました。
- 立証責任の転換:公益通報をした日から1年以内にされた解雇や懲戒は、公益通報を理由としてされたものと「推定」されます。これにより、裁判等になった場合、企業側が「通報を理由とした処分ではない」ことを十分に証明できなければ、不当な処分と認定されることになります。
- 直罰規定の新設:通報を理由として解雇や懲戒を行った者に対して、6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という直接的な刑事罰が新設されました。また、法人に対しても3,000万円以下の罰金という重い罰則(法人重科)が科されます。
3. 通報を阻害する要因への対処(通報妨害・通報者探索の禁止)
企業内で不正の隠蔽を図るような行為を防ぐため、以下の行為が禁止されました。
- 通報妨害行為の禁止:正当な理由なく、労働者やフリーランス等に対して「通報しない」という合意を求めたり、通報した場合に不利益な取扱いをすると告げたりして、通報を妨げる行為が禁止されます。これに反して結ばれた誓約書などの合意は無効となります。
- 通報者探索の禁止:正当な理由なく、誰が通報したのかを特定しようとする行為(通報者探索)も明確に禁止されました。
4. 体制整備の徹底と実効性の向上
常時使用する労働者が301人以上の企業には、内部公益通報対応体制を整備する義務がありますが、企業に適切な対応を促すため、行政の権限や罰則が強化されました。
- 体制整備の義務違反等(従事者指定義務違反など)に対して、これまでの勧告等に加え、勧告に従わない場合の命令権や**命令違反時の刑事罰(30万円以下の罰金)**が新設されました。
- 行政の権限として立入検査権限が新設され、検査の拒否や虚偽報告に対しても刑事罰が設けられました。
- 企業に対し、労働者やフリーランス等へ自社の公益通報対応体制を周知する義務があることが明確に示されました。
FAQ(よくある質問)
Q. 匿名でも公益通報をすることはできますか? A. 一部の例外(行政機関等への通報で、氏名等を記載した書面が必要な場合)を除き、匿名でも要件を満たせば公益通報を行うことができます。ただし、匿名の場合は通報先から調査結果の通知を受け取れない可能性があるため、企業側は個人が特定できないメールアドレス等を用いて連絡が取れる仕組みを導入することが推奨されています。
Q. すでに退職している場合や、業務委託契約が終わっている場合でも通報できますか? A. はい、可能です。退職者やフリーランスであった者は、退職または契約終了から1年以内であれば通報主体として保護されます。また、この期間内に通報をしていれば、その後1年を経過しても継続して不利益な取扱いから保護されます。
Q. 通報の対象となるのはどのような事実ですか? A. 単なる社内の規程違反などではなく、対象となる法律(国民の生命、身体、財産などの保護に関わる法律)に規定された犯罪行為や、最終的に刑罰・過料につながる法令違反行為が対象です。たとえば、職場のパワハラやセクハラは、暴行などの犯罪行為に当たらない限り、本法における通報対象事実には該当しません。
Q. 外部に通報する前に、まずは社内の上司に相談しなければいけませんか? A. いいえ、通報の順番に決まりはありません。社内の窓口、行政機関、報道機関や消費者団体などの外部通報先のうち、どこへ先に通報しても保護の対象になり得ます。企業が「まずは上司や社内窓口へ通報すること」を強制することは、法で禁止されている通報妨害に該当する可能性があります。


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