令和8年分の年末調整は、例年と違って「基礎控除や給与所得控除の見直し」「扶養親族の所得要件の改正」が重なる年です。改正は令和8年12月1日に施行され、年末調整の計算にそのまま反映されます。
この記事では、変更点の一覧、源泉徴収との関係、10月のうちに済ませたい準備を、給与計算に携わる事業主・担当者の方向けにまとめました。
令和8年分の主な変更点
令和8年分の年末調整で押さえたい変更点は、次のとおりです。
| 項目 | 令和7年分 | 令和8年分 |
|---|---|---|
| 基礎控除(本則) | 58万円 | 62万円 |
| 基礎控除の特例加算 | 最大37万円 | 最大42万円 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円(本則69万円+特例5万円) |
| 扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 | 合計所得金額58万円以下 | 合計所得金額62万円以下(給与収入のみなら136万円以下) |
| 特定親族の所得要件 | 合計所得金額58万円超123万円以下 | 合計所得金額62万円超123万円以下 |
| 勤労学生の所得要件 | 合計所得金額85万円以下 | 合計所得金額89万円以下 |
| 一般生命保険料控除(新契約)の限度額 | 4万円 | 23歳未満の扶養親族がいる場合は6万円 |
なお、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除を合計した限度額(12万円)は変わりません。
基礎控除と「178万円」
合計所得金額が489万円以下の場合、基礎控除は104万円(本則62万円+特例42万円)です。給与所得控除の最低保障額74万円と合わせると178万円となり、ほかに所得や控除がない場合は、給与収入が178万円までなら所得税がかからない計算になります。社会保険料控除などがある方は、178万円を超えても税額が生じないことがあります。
扶養の所得要件も変わります
扶養親族や同一生計配偶者の所得要件は、合計所得金額62万円以下(給与収入のみなら136万円以下)になります。たとえば、時給1,300円で週20時間働く配偶者の年収はおよそ135万円です。令和7年分では配偶者特別控除の対象でしたが、令和8年分では配偶者控除の対象になる計算です。
施行日と源泉徴収の関係
ここが、一番混乱しやすい点です。
- 基礎控除などの改正は、令和8年12月1日に施行されます。
- 一方、源泉徴収税額表の改正は、令和9年1月1日以後に支払う給与から適用されます。
- そのため、令和8年中の給与は、12月分も含めて改正前の源泉徴収税額表で源泉徴収します。
- 改正による差額は、12月の年末調整でまとめて精算します。控除額が大きくなる分、還付が生じやすくなります。
なお、令和8年12月1日以後に支払う給与の源泉徴収では、改正で新たに要件を満たす親族を「扶養親族等の数」に含めて計算します。
例外にご注意ください
令和8年11月30日以前に最後の給与を支払った死亡退職者、海外転勤などで非居住者となった従業員、休業・休職して令和8年末までに復職していない従業員の年末調整には、改正後の控除が適用されません。改正後の控除を受けるには、本人(死亡退職者の場合は相続人)による確定申告や更正の請求が必要になります。
10月から始める準備スケジュール
| 時期 | 対応内容 |
|---|---|
| 10月下旬 | 申告書を準備し、従業員へ配付 |
| 11月下旬まで(社内期限の目安) | 申告書と控除証明書を回収し、内容を確認 |
| 12月 | その年最後の給与の支払い時に、年税額を計算して過不足を精算 |
| 令和9年1月 | 源泉所得税を納付(令和9年は1月12日、納期の特例は1月20日)。源泉徴収票の交付、法定調書・給与支払報告書の提出 |
源泉徴収票などの提出期限は、令和9年は1月31日が日曜日のため、2月1日(月)となります。
申告書の様式変更と配付時の注意点
年末調整で配付する主な申告書は、次の3種類です。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
注意したい点は、次のとおりです。
- 前年の様式は使わない。 基礎控除申告書の「控除額の計算」欄と「判定」欄が、改正後の金額に修正されています。保険料控除申告書には、生命保険料控除の特例に対応する欄が追加されました。
- 扶養控除等申告書の裏面の注意事項が、改正前の所得要件のままになっている場合があります。 令和8年分の基準(62万円以下)で判断するよう案内しましょう。
- 改正で新たに扶養親族等になる親族がいる場合は、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載してもらいます。
国税庁は、令和8年分の年末調整用の各種様式を、6月30日に公表しています。
担当者がつまずきやすいポイント
- 対象者: 扶養控除等申告書を提出している従業員が対象です。パート・アルバイトでも、提出していれば対象になります。
- 対象となる給与: 勤務した月ではなく、令和8年1月1日から12月31日までに支払いが確定した給与です。
- 中途入社の方: 前職の源泉徴収票が必要です。入社時に提出を求めておきましょう。
- 住宅ローン控除: 初年度は本人の確定申告が必要で、年末調整で控除できるのは2年目以降です。
- 税の扶養と社会保険の扶養は、別の基準です。 税の扶養に入れるかどうかと、社会保険の被扶養者になれるかどうかは、混同しないようご注意ください。
給与計算の実務で確認したいこと
年末調整は、給与計算と一体の業務です。10月のうちに、次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 給与計算ソフトが、令和8年分の改正に対応した最新版になっているか
- 従業員への案内文に、様式の変更点と「令和8年12月1日 改正」の記載方法を入れたか
- パート・アルバイトの方から、扶養に関する質問が増える見込みがあるか
個別の税務相談や、控除の適用可否の最終判断は、税理士または税務署にご確認ください。
まとめ
- 令和8年分の年末調整は、基礎控除62万円、給与所得控除の最低保障額74万円、扶養の所得要件62万円以下など、見直し点が多い年です。
- 改正は12月1日施行、源泉徴収税額表の切り替えは令和9年1月1日以後です。令和8年中の差額は、12月の年末調整で精算します。
- 10月のうちに、新しい様式の配付と案内の準備を進めましょう。
当事務所では、給与計算や社会保険の手続きをサポートしています。お気軽にご相談ください。
※本記事は令和8年10月15日時点の情報です。最新の内容は、国税庁のホームページでご確認ください。
参考:国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」


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