建設業の現場で働く一人親方や、中小企業の事業主や役員は、原則として、労災保険の対象外です。現場での作業は、雇われている労働者とほとんど変わらないのに、万が一のときに補償が受けられないおそれがあります。そこで使えるのが、「特別加入」の制度です。
特別加入とは
労災保険は、雇われている「労働者」を対象にした制度です。一人親方や事業主、役員は、強制適用の対象外になります。ただし、作業の実態が労働者に近く、災害のリスクもあるため、任意で加入できる「特別加入」が設けられています。
加入すると、業務上の災害と通勤災害について、労働者と同じように、労災保険の給付を受けられます。
建設業でよく使われる2つのパターン
| 区分 | 対象 | 手続きの窓口 |
|---|---|---|
| 一人親方等の特別加入 | 労働者を使用しないで建設の事業を行う一人親方や、その家族従事者 | 特別加入団体を通じて申請 |
| 中小事業主等の特別加入 | 労働者を雇用する中小事業主や、役員など | 労働保険事務組合に事務を委託 |
一人親方等の場合は、特別加入団体が、構成員の労災保険の適用について申請し、政府の承認を受けます(労働者災害補償保険法第35条)。団体は、加入者が守るべき事項などを定めます。
中小事業主等の特別加入は、労働保険事務組合に、労働保険の事務を委託していることが前提です(規模の要件などは、厚生労働省の案内で確認してください)。
手続きの流れ(一人親方の場合)
- 加入する特別加入団体を選ぶ
- 団体に加入し、加入申請をする
- 給付基礎日額を選ぶ
- 団体が労働基準監督署に申請し、承認を受ける
- 保険料を納める
加入した日からが、補償の対象です。加入する前に起きた災害は、対象になりません。
給付基礎日額と保険料
給付基礎日額は、補償の額の基準になる金額で、自分で選びます。3,500円、4,000円から10,000円までは1,000円刻み、12,000円から24,000円までは2,000円刻み、25,000円の16段階です。
年間の保険料は、「給付基礎日額×365日×保険料率」で求めます。選ぶ日額が高いほど、補償は厚くなりますが、保険料も高くなります。団体の加入費や組合費が、別にかかることがあります。保険料率は、厚生労働省の最新の案内で確認してください。
注意したい点
- その作業が、承認された業務の範囲に含まれているか、加入する前に確認します。
- 元請けから、特別加入を求められるケースがあります。現場に入る前に、加入証明を準備しておきましょう。
- 従業員を雇っているときは、その従業員は、事業主の労災保険の対象です。特別加入では、従業員の加入の代わりにはなりません。
- 健康保険や年金の手続きとは別の手続きです。あわせて確認しましょう。
まとめ
- 一人親方や事業主、役員は、労災保険の強制適用の対象外ですが、「特別加入」で、補償を受けられます。
- 一人親方は特別加入団体、中小事業主は労働保険事務組合を通じて、手続きをします。
- 加入前の災害は対象外なので、早めの手続きをおすすめします。
当事務所では、労災保険・雇用保険の手続きや、労務管理をサポートしています。お気軽にご相談ください。
※本記事は令和8年10月15日時点の情報です。最新の内容は、厚生労働省のホームページでご確認ください。
参考:厚生労働省「労災保険特別加入制度」、労働者災害補償保険法第33条・第35条


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