インフルエンザなどの感染症が流行する季節になりました。従業員を休ませるときに、休業手当は必要なのか、本人が休むときは何が使えるのか。岐阜県の中小企業の事業主や人事担当者に向けて、考え方を整理します。
休業手当とは
休業手当とは、会社の都合で従業員を休ませたときに支払うお金です。労働基準法第26条で、使用者の責に帰すべき事由による休業では、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことが必要とされています。
「平均賃金」は、原則として直近3か月の賃金総額を、その期間の総日数で割って求めます。
会社の判断で休ませる場合
会社の判断で休ませる場合は、使用者の責に帰すべき事由にあたり、休業手当が必要になる可能性が高くなります。
厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(令和7年4月25日更新)では、感染症で休ませる場合について、次のように整理されています。この考え方は、インフルエンザなど他の感染症で休ませるときにも参考になります。
- 使用者の責に帰すべき事由による休業では、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払う
- 不可抗力による休業といえるのは、事業の外部で発生した事故で、通常の経営者が最大の注意を尽くしても避けられない場合に限られる
- 感染や発熱があることだけを理由に、一律に休ませる場合は、一般的に使用者の責に帰すべき事由にあたり、休業手当が必要とされている
- 労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に扱う。事業場で設ける病気休暇制度の活用が考えられる
注意したいこと
実際の判断は、休業の理由や状況によって変わります。都道府県知事による就業制限など、法律に基づく休業の扱いは、このQ&Aの範囲では確認できませんでした。迷うときは、岐阜労働局や労働基準監督署に相談してください。
本人が病気で休む場合
従業員本人が病気で休むときは、次の方法があります。
- 年次有給休暇を使う
- 欠勤にする(この間の賃金は、就業規則や賃金規程の定めによります)
- 健康保険の傷病手当金を申請する
年次有給休暇は、原則として本人が請求する時季に与える必要があります。会社が一方的に取得させることはできません。厚生労働省のQ&Aでも、感染者を一律に年休扱いにすることは問題になり得るとされ、就業規則に沿って適切に取り扱うよう求められています。
傷病手当金の使い方
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休み、給与が受けられないときに、健康保険から支給されるお金です。協会けんぽの案内では、次のすべてを満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガで療養するための休業であること
- 仕事に就けない状態であること
- 連続する3日間(待期)を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業期間について、給与が支払われていないこと
待期と支給額
待期の3日間には、有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれます。支給は、待期の後の4日目以降です。
1日あたりの支給額は、直近12か月の標準報酬月額の平均額の30分の1に、3分の2を掛けて計算します。支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。
インフルエンザの場合は、治癒までの期間が短く、待期の3日間で終わることも多いでしょう。その場合、傷病手当金は支給されません。
比べてみましょう
| 区分 | 休業手当 | 傷病手当金 |
|---|---|---|
| 払う・出すところ | 会社 | 健康保険(協会けんぽなど) |
| 対象 | 会社の責に帰すべき休業 | 本人の病気やケガによる休業 |
| 金額の目安 | 平均賃金の60%以上 | 標準報酬日額の3分の2 |
よくある質問
Q1. パートやアルバイトも、休業手当の対象ですか。
労働基準法上の労働者であれば、対象です。厚生労働省のQ&Aでは、非正規雇用であることだけを理由に一律に除外すると、パート・有期雇用労働法などに違反する可能性があると示されています。
Q2. 休業手当が不要な場合は、何も払わなくてよいですか。
休業手当が不要な場合でも、労使でよく話し合い、就業規則などで休業時の手当を定めておくことが望ましいとされています。
Q3. 特別休暇を新しく設けることはできますか。
労使の話し合いで、事業場に特別休暇を設けることができます。就業規則への規定と、従業員への周知が大切です。相談先として、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が案内されています。
就業規則の出勤停止の定めを点検しましょう
感染症のときに出勤を止める場合に備えて、就業規則を確認しておきましょう。
- 出勤停止を命じる場合の条件
- 出勤停止の期間中の賃金の扱い
- 医師の診断書や、治癒の確認の求め方
- 在宅勤務への切替えができるか
定めがないと、休ませるときに混乱しやすくなります。事前に整えておくと安心です。
まとめ
- 会社の責に帰すべき理由で休ませるときは、平均賃金の60%以上の休業手当が必要です。
- 公的機関の指導や医師の指導による休業は、休業手当の対象外となる場合があります。
- 本人が病気で休むときは、年次有給休暇や傷病手当金(待期3日)を使えます。
- 就業規則の出勤停止の定めを、流行の前に点検しましょう。
当事務所では、感染症への対応に関する就業規則の整備や手続きのご相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
※本記事は令和8年10月26日時点の情報です。最新の取扱いは、厚生労働省・岐阜労働局・協会けんぽの案内でご確認ください。
参考
- 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
- 鳥取労働局「新型インフルエンザに関する休業手当」(平成22年・参考) https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/oyakudachi/yokuaru_soudanjirei/22situmon_rodojoken1/22kaito_rodojyoken6.html
- 協会けんぽ「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html


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